プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

ブックレビュー

LGBTの職場の問題は解決できると伝えたい。『虹色ジャーニー~ 女と男と時々ハーフ』(浅沼智也著/文芸社)

LGBTの職場の問題は解決できると伝えたい 『虹色ジャーニー~ 女と男と時々ハーフ』(浅沼智也著/文芸社) LGBTのTは「トランスジェンダー」を意味し、自認する性別と出生時の性別が一致していない人のことを指します。『虹色ジャーニー~ 女と男…

協同組合運動と新しい世代との接続は?『西暦二〇三〇年における協同組合 コロナ時代と社会的連帯経済への道(ダルマ舎叢書Ⅲ)』(柏井宏之・樋口兼次・平山昇共同編集/社会評論社)

協同組合運動と新しい世代との接続は? 『西暦二〇三〇年における協同組合 コロナ時代と社会的連帯経済への道(ダルマ舎叢書Ⅲ)』(柏井宏之・樋口兼次・平山昇共同編集/社会評論社) 本書は、協同組合運動に関わって来た多くの方の寄稿という形で構成され…

働けなくなり、家を失ったとき直面する現実。『コロナ禍の東京を駆ける 緊急事態宣言下の困窮者支援日記』(稲葉剛・小林美穂子・和田靜香編/岩波新書)

働けなくなり、家を失ったとき直面する現実。 『コロナ禍の東京を駆ける 緊急事態宣言下の困窮者支援日記』(稲葉剛・小林美穂子・和田靜香編/岩波新書) コロナ禍で日雇いなどの非正規労働者たちは仕事を失い、去年4月に出された緊急事態宣言にともなうネ…

セクハラ上司をやっつけるコメディ。映画『9to5(9時から5時まで)』 (コリン・ヒギンズ監督/1980年・アメリカ)

アメリカでは1970年代のウーマン・リブ運動によって、「伝統的な女性像」が根本から否定され、女性の労働が当たり前のものとなっていきました。映画『9to5』は、1980年製作のアメリカ映画です。監督はコリン・ビギンズ、主人公ジュディを演じるの…

嵐のような刑事弾圧と関西生コン支部の闘い。『武健一が語る 大資本はなぜ私たちを恐れるのか』 (武健一著/旬報社)

全日本建設運輸労働組合関西地区生コン支部(以下、関西生コン支部)に対する、信じられないような刑事弾圧は、正に戦後の民主主義にとっての悪夢です。 関西生コン支部の武健一執行委員長は641日にも及ぶ勾留生活を強いられました。『武健一が語る 大資…

男性性を分析し、自分そのものへ向かう考察。『さよなら、男社会』(尹雄大著/亜紀書房)

世の中は、様々なジェンダーバイアスや「有害な男らしさ」で満ちあふれています。『さよなら、男社会』は、インタビュアー&ライターの伊雄大氏による1冊です。本書は生活の中に溢れる様々な「男社会」の問題等を、筆者自身の経験と観測に基づき精細に描き…

年収2千万円から土木作業員、除染作業員、“下級国民”に至る実話。『下級国民A』(赤松利市著/CCCメディアハウス)

年収2千万円から土木作業員、除染作業員、“下級国民”に至る実話『下級国民A』(赤松利市著/CCCメディアハウス) ゴルフ場コンサルタントの男性が、経営不振から、東日本大震災の復興バブルに乗らんと被災地へ向かうも、ことごとく搾取されるリアル。 …

大手日雇い派遣G社廃業の日まで勤務した組合員が振り返る過酷な現実。『非正規レジスタンス 池袋ウエストゲートパークⅧ』(石田衣良/文春文庫)

大手日雇い派遣G社廃業の日まで勤務した組合員が振り返る過酷な現実 『非正規レジスタンス 池袋ウエストゲートパークⅧ』(石田衣良/文春文庫) ■はじめに 自身の勤務経験からひもときます 本書は、複数の収録作のなかで書名にもなっている代表作で、違法派…

貧困との闘いに立ち上がるイギリス労働者。『1945年の精神 (THE SPIRITOF '45)』(ケン・ローチ監督/2013年・イギリス)

貧困との闘いに立ち上がるイギリス労働者。『1945年の精神 (THE SPIRITOF '45)』(ケン・ローチ監督/2013年・イギリス) filmarks.com 1945年は、第二次世界大戦が終わった年です。イギリスでは、戦前戦中から労働者階級が深刻な貧困に喘いでい…

トランスジェンダーの著者が今いる場所と社会を変えた奮戦記。『元女子高生、パパになる』(杉山文野著/文藝春秋)

トランスジェンダーの著者が今いる場所と社会を変えた奮戦記。『元女子高生、パパになる』(杉山文野著/文藝春秋) books.bunshun.jp 著者は、トランスジェンダーで元フェンシング日本代表の杉山文野さん。私の地元でもある川越で行われたLGBT成人式で…

分断を乗り越え、社会を動かすための良書。『社会はこうやって変える! コミュニティ・オーガナイジング入門』(マシュー・ボルトン/法律文化社)

分断を乗り越え、社会を動かすための良書 『社会はこうやって変える! コミュニティ・オーガナイジング入門』(マシュー・ボルトン/法律文化社) www.hou-bun.com 本書は、イギリスのコミュニティ・オーガナイザー、マシュー・ボルドンさんによるコミュニテ…

「普通の人」が社会を変えるための方法論。『コミュニティ・オーガナイジング ほしい未来をみんなで創る5つのステップ』(鎌田華乃子/英治出版)

「普通の人」が社会を変えるための方法論。『コミュニティ・オーガナイジング ほしい未来をみんなで創る5つのステップ』(鎌田華乃子/英治出版) honto.jp コミュニティ・オーガナイジングとは、人々の力で社会を変えていくための手段のことをいいます。本…

【要友紀子さん寄稿】AV女優が働き方を自ら管理するための本。『AVについて女子が知っておくべきすべてのこと』(澁谷果歩著/CYZO)レビュー

AV女優が働き方を自ら管理するための本 『AVについて女子が知っておくべきすべてのこと』(澁谷果歩著/CYZO) cyzo-two.shop-pro.jp 労働者の中に、勤務問題における被害者と被害者でない人という二種類の人間がいるわけではないように、AVの仕事…

労働と生産のあり方を変えるために。『人新世(ひとしんせい)の「資本論」』(斎藤幸平著/集英社新書)

人類の活動が地質学的にも地球上に痕跡を残す時代=「人新世(ひとしんせい)」の今、気候危機が私たちの生活を脅かしています。著者は、グリーン・ニューディールも、SDGsも、この危機を商機と捉えるイノベーションも地球環境への負荷の増大を止められず、…

「消費者」に弱体化された労働者、闘うきっかけは腹からの動機。『武器としての「資本論」』(白井聡著/東洋経済新報社)

著者は、「この本は『資本論』を読んでもらうための入門書。『資本論』は、一方では国際経済、グローバルな資本主義の発展傾向というような最大限にスケールの大きい話に関わっていながら、他方で、きわめて身近な、自分の上司がなぜイやな態度をとるのか、…

偏見、差別・貧困と闘いバレーダンサーに。スト中の炭鉱で、労働者の琴線に触れる物語。『リトルダンサー』(スティーヴン・ダルドリー監督/2000年/イギリス)

偏見、差別・貧困と闘いバレーダンサーに。スト中の炭鉱で、労働者の琴線に触れる物語 『リトルダンサー』(スティーヴン・ダルドリー監督/2000年/イギリス) 『リトルダンサー(原題:Billy Elliot)』は2000年に公開されたイギリスの映画です。…

子育て論だが、大人自身が顧みたい。『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(太田啓子著/大月書店)

子育て論だが、大人自身が顧みたい 『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(太田啓子著/大月書店) みなさんは、ジェンダーバイアスという言葉を聞いたことがありますか。男女の役割に関する固定的な観念や、それに基づく差…

社会や地域と連帯して共感を集めるストを。『ストライキ2.0 ブラック企業と闘う武器』(今野晴貴著/集英社新書)

社会や地域と連帯して共感を集めるストを 『ストライキ2.0 ブラック企業と闘う武器』(今野晴貴著/集英社新書) 労働組合の争議行為の中で、最も代表的なストライキですが、最近日本ではほとんど見られなくなってしまいました。『ストライキ2.0 ブラック企…

映画『アリ地獄天国』を観て 3年間闘い続けて逞しくなった主人公。ユニオンの活動伝え労働者に勇気を与える

プレカリアートユニオンが取り組んだ引越会社との労働争議を記録したドキュメンタリー映画『アリ地獄天国』が、東京・渋谷のユーロスペースを皮切りに、11月1日から東京・田端のシネマ・チュプキ・タバタにて上映されています。11月21日からは、横浜…

『アリ地獄天国』都内でも上映開始! 生きるため、前に進むための後押しする映画

『アリ地獄天国』都内でも上映開始!生きるため、前に進むための後押しする映画 プレカリアートユニオンが取り組んだ引越会社との労働争議を記録したドキュメンタリー映画『アリ地獄天国』が、10月24日から東京・渋谷のユーロスペースで、11月1日から…

炭鉱閉鎖が迫る町で、音楽を愛した炭鉱夫たち。『ブラス!』(マーク・ハーマン監督/イギリス/1996年)

炭鉱閉鎖が迫る町で、音楽を愛した炭鉱夫たち 『ブラス!』(マーク・ハーマン監督/イギリス/1996年) 映画「ブラス!」は、マークハーマン監督による1996年製作のアメリカ・イギリス映画です。1980年代、イギリスではサッチャー政権による炭…

長時間労働と睡眠不足が命を奪う。『過労死 その仕事、命より大切ですか』(牧内昇平著/ポプラ社)

長時間労働と睡眠不足が命を奪う。 『過労死 その仕事、命より大切ですか』(牧内昇平著/ポプラ社) 過労死という言葉は、2000年代初頭には、海を越えて「karoshi」という英語まで生み出すに至りました。働き方改革により、残業時間の規制が強化され過…

実態ない概念のねつ造を丹念に解き明かす。『「在日特権」の虚構 増補版 ネット空間が生み出したヘイト・スピーチ』(野間易通著/河出書房新社)

実態ない概念のねつ造を丹念に解き明かす『「在日特権」の虚構 増補版 ネット空間が生み出したヘイト・スピーチ』(野間易通著/河出書房新社) 皆さんは、「在日特権」という言葉を聞いたことがありますか。愛国者を語る差別的な集団などが特定の在日外国人…

米史上最大の公害訴訟組織したシングルマザー。映画『エリン・ブルコビッチ』

映画『エリン・ブルコビッチ』(スティーブン・ソダーバーグ監督/アメリカ/2000年) movies.yahoo.co.jp この映画は、環境運動家のエリン・ブロコビッチ氏が闘ったPG&E社による環境汚染問題をモチーフにした、実話に基づいた作品です。主演はジュ…

弁護士による退職代行サービスの限界。労働組合なら職場を変えることもできる

『退職代行』(小澤亜季子著/SB新書) www.sbcr.jp 皆さんは、退職代行という言葉をご存じでしょうか。読んで字のごとく、「退職」を「代行」するサービスです。近年この退職代行へのニーズが高まっているというのです。労働基準法では、その最も重い罰則…

移民の清掃労働者が糧と尊厳を求め立ち上がる。映画『ブレッド&ローズ』

『ブレッド&ローズ』は2000年イギリス製作の映画です。以前もこのコーナーで取り上げた『家族を想うとき』の監督でもある、社会派の巨匠ケン・ローチ監督による初のアメリカ撮影作品です。移民労働者の貧困と差別、そして、労働組合と企業の闘いを描い…

非雇用で働く労働者の仲間として。『地下アイドルの法律相談』(深井剛志・姫乃たま・西島大介著/日本加除出版)

「地下アイドル×法律」一見すると「???」となってしまいそうですが、インディーズアイドル界では、当事者の無知につけ込んだ様々な搾取の構造が存在しています。「地下アイドルの法律相談」は旬報法律事務所の深井剛志弁護士、ライターで元地下アイドルの…

無意識に差別をしないための知識を。『LGBTとハラスメント』(神谷悠一、松岡宗嗣著/集英社新書)

いわゆる「パワハラ防止法」が、今年6月から大企業や自治体などで施行され、パワハラの防止対策を講ずることが義務づけられました。このパワハラのなかに、「SOGIハラ」や「アウティング」といった主にセクシャルマイノリティに対する偏見から生じるハ…

男性正社員の既得権守る労働組合がセクハラに加担。映画『スタンドアップ』(ニキ・カーロ監督/2005年/アメリカ)

「スタンドアップ(原題NorthCountry)」は、ニキ・カーロ監督による2005年アメリカ製作の映画です。1988年に行われた世界初のセクハラ訴訟を元にした作品で、主人公はシャーリーズ・セロン演じるジョージー・エイムズ、炭鉱で働くシングルマザーで…

プレカリアートの胸のうち表現する啄木。『啄木短歌に時代を読む』(近藤典彦著/吉川弘文館)

プレカリアートの胸のうち表現する啄木。『啄木短歌に時代を読む』(近藤典彦著/吉川弘文館) 石川啄木は、「時代閉塞の現状」と闘いました。彼の詩は没後も日本中で広く親しまれてきました。その後、1970年代から若者の啄木離れが進み、バブル期にそれ…